空色幻想曲
「ええ。『君の実力を知るまでは隊長と認めない』って」

「ええ!?」

 目玉が飛びでそうなほど大きく見開いた私を見て、おかしそうに言葉をつけ足す。

「セージュ殿とフェンネル殿が決めたことに異を唱えるつもりはありませんよ。あのお二方が認めたのなら、相応の腕はあるでしょうね」

「じゃあ、どうして?」

「このくらいの逆境は彼も覚悟のうえでしょう。でないと、隊長はとても務まりません。……僕もいろいろありましたからね」

 言いながら肩をすくめて見せる。小さく笑って

「姫が心配なさらなくても大丈夫ですよ。そのうち、なるようになりますから」

 と、おだやかに締めくくった。
「なるほど」と、うなずく。確かに、逆境を乗り越えるのは本人だ。私がとやかく口を出せるものではない。

 レガートも副隊長になったときはやっかみを受けたのだろう。伯爵子息だからこそ貴族同士のいさかいもあって当然だ。
 けれど今では隊員からとても慕(した)われている。彼自身が逆境に堪えて努力した結果だ。

 ……それにしてもレガートの『意地悪』というのは、まったくイジワルになっていない。らしいというと、らしいけれど。

 隊長になり損ねたのだから、レガートこそリュートを一番不愉快に感じていておかしくないのに。そういう妬みのきもちはいっさいないように思う。飽くまで冷静に隊長に足る人物かどうか見極めようしているだけ、そのように受けとれた。

 いや、むしろ……
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