空色幻想曲
「レガート……なんか楽しそうね」
「そう見えますか?」
「うん。すごく」
レガートはいつでもほほ笑みを絶やさない人だ。
でも凍りついた笑みという感じで、心から他人とうち解けることはめったにない。
幼なじみの私には、氷の仮面を融かしてくれることもあったけれど。それも騎士になってからはめっきり減ってしまった。
寂しいことだけど、おたがいの立場とレガートの性格を考えればしかたないとも思った。伯爵家の長男としてグランヴィオール伯の期待に懸命に応えようとしている。
そんな感じが昔からあった。
そのレガートが、明らかにいつもの凍りついたものとはちがう笑みを浮かべていた。子どもにもどったような男の子らしいわんぱくさを秘めた笑み。
「……まあ、興味深い人ですからね」
「興味深い?」
「英雄の再来と呼ばれるほどの実力を持っているなら、一度は本気で剣を交えたい、と思うのが騎士というものでしょう」
「騎士じゃないけど、きもちはわかるわ!」
力いっぱい同意すると、苦笑混じりのため息をつかれてしまった。
「捜している理由はそれですか? 困った姫君だ……」
「あはは……」
頭をかきながら笑ってごまかす。けれど、そのすぐあとに
「もし彼を見かけたら教えてくれる?」
と少し甘えた響きで尋ねてみたら。あきらめたように「貴女の頼みなら断れませんね」とつぶやいて極上の貴公子スマイルを浮かべた。
「くれぐれもお怪我はなさらないように、ほどほどにしてくださいね。ティアニス姫」
堅苦しいくらい礼儀正しい幼なじみの心遣いに、クスリとほほ笑みながらうなずいた。
********************
「そう見えますか?」
「うん。すごく」
レガートはいつでもほほ笑みを絶やさない人だ。
でも凍りついた笑みという感じで、心から他人とうち解けることはめったにない。
幼なじみの私には、氷の仮面を融かしてくれることもあったけれど。それも騎士になってからはめっきり減ってしまった。
寂しいことだけど、おたがいの立場とレガートの性格を考えればしかたないとも思った。伯爵家の長男としてグランヴィオール伯の期待に懸命に応えようとしている。
そんな感じが昔からあった。
そのレガートが、明らかにいつもの凍りついたものとはちがう笑みを浮かべていた。子どもにもどったような男の子らしいわんぱくさを秘めた笑み。
「……まあ、興味深い人ですからね」
「興味深い?」
「英雄の再来と呼ばれるほどの実力を持っているなら、一度は本気で剣を交えたい、と思うのが騎士というものでしょう」
「騎士じゃないけど、きもちはわかるわ!」
力いっぱい同意すると、苦笑混じりのため息をつかれてしまった。
「捜している理由はそれですか? 困った姫君だ……」
「あはは……」
頭をかきながら笑ってごまかす。けれど、そのすぐあとに
「もし彼を見かけたら教えてくれる?」
と少し甘えた響きで尋ねてみたら。あきらめたように「貴女の頼みなら断れませんね」とつぶやいて極上の貴公子スマイルを浮かべた。
「くれぐれもお怪我はなさらないように、ほどほどにしてくださいね。ティアニス姫」
堅苦しいくらい礼儀正しい幼なじみの心遣いに、クスリとほほ笑みながらうなずいた。
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