空色幻想曲
     ◇ ◇ ◇

「ねーっ! いいでしょう!?」

「駄目だ!」

「ねぇ、お願い」

「……駄目だ」

「ケチ、陰険、ツリ目、無愛想」

 内庭に続く回廊。
 俺の後ろをちょこちょことついてくるのは、空色の姫ティアニス。可愛らしく甘えたり、すねたり。くるくる表情が変わるその仕草は至って普通の女の子なのだが……

「駄目なものは駄目だ」

「なんでよ~?」

「了承した奴がいたか?」

「い、いない……」

「本当に他の奴にもしているんだな……」

「手合わせくらいはしてくれた騎士もいるよ。でも、みんな手加減するんだもの」

「当然だ」

「それじゃ修行にならないわ。私はもっと強くなりたいの!」

 普通の女の子が持つには非常に不似合いな剣をその手に構え、威勢よく振り回した。

 最初、「お願いがあるの」と上目遣いで言われたから何かと期待してみれば、この俺に剣を教えてほしいのだという。

 全く冗談じゃない。

 俺の使命は王女を護ることであって、決して王女に剣を教えることではない。それなのに、このジャジャ馬姫ときたら断っても断ってもしつこくついてきて、同じやり取りをここ数日繰り返していた。
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