空色幻想曲
「だ・か・ら」

「?」

「剣の稽古つけて!」

「何が『だから』だ。話が繋がってないぞ」

「フェンの代わりにあなたが剣を教えてって言ってるの!」

「断る!」

「王女の命令って言ったら?」

 ……それは権力の使い方を間違っているぞ。

「ダリウス殿に報告されたいか?」

「そ、それは困る!」

 王女の教育係の名前を出してみたら、顔面が蒼白した。ジャジャ馬姫にも苦手なものはあるらしい。

「なら、諦めろ」

「イ・ヤ!」

「……なぜそんなに強くなりたいんだ?」

 素朴な疑問だった。護身術程度なら今でも充分に思える。

「話したら稽古つけてくれる!?」

「それとこれとは話が別だ」

「じゃあ言わない!」

「勝手にしろ」

 これ以上は付き合っていられないとばかりにマントを(ひるがえ)す。後ろから慌てて追いかけてくる足音が聞こえた。無視して歩き続けていたら、前に回り込んで両手を広げた。

「そんな……待ってよ、ねぇっ! 稽古つけてくれたらなんでも一つ言うこと聞くから~、お願い!!」

 つぶらな瞳を潤ませ極上の甘えた声で「お願い」攻撃。
 加えて「なんでも一つ言うことを聞く」という甘い誘惑。
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