空色幻想曲
彼は大聖堂の管理と同時に、王室おかかえの医師を務めている。
神の力を借りて傷を癒すのが、神官。
薬の力を借りて病を治すのが、医師。
二つは似て異なるもので、それぞれ別の専門知識と才能が必要だ。
そのどちらも極めた天才がラーファルト神官長だった。
「お母様のご容態は変わりなくて?」
「常と変わらぬご様子とお見受けしました。最近は病状も安定しています」
「よかった……」
「ただ……」
「ただ?」
ガラス越しの瞳がかすかに曇る。
「お身体より、お心のほうに何か抱えていらっしゃると感じました。ここ一週間のことですが」
ドクン──と、小さく心臓が跳ねた。
「身体に効く薬はご用意できても、心に効く薬はなかなか難しいですからね。王女様がお顔をお見せになれば変わるかもしれません」
「ええ。そのつもりよ」
内心でふるえながら、いつもの笑顔をかえす。
「それはようございました」
「でもお父様のほうを先に……と思って」
「そうでしたね。どうぞこちらに」
神の力を借りて傷を癒すのが、神官。
薬の力を借りて病を治すのが、医師。
二つは似て異なるもので、それぞれ別の専門知識と才能が必要だ。
そのどちらも極めた天才がラーファルト神官長だった。
「お母様のご容態は変わりなくて?」
「常と変わらぬご様子とお見受けしました。最近は病状も安定しています」
「よかった……」
「ただ……」
「ただ?」
ガラス越しの瞳がかすかに曇る。
「お身体より、お心のほうに何か抱えていらっしゃると感じました。ここ一週間のことですが」
ドクン──と、小さく心臓が跳ねた。
「身体に効く薬はご用意できても、心に効く薬はなかなか難しいですからね。王女様がお顔をお見せになれば変わるかもしれません」
「ええ。そのつもりよ」
内心でふるえながら、いつもの笑顔をかえす。
「それはようございました」
「でもお父様のほうを先に……と思って」
「そうでしたね。どうぞこちらに」