空色幻想曲
◇ ◇ ◇
剣を置くため、一度自分の部屋にもどった。置いた後「よし」と小さくかけ声を発して扉に向かう。
一週間ぶりにお母様のところへ──……
ドアノブに手をかける寸前でノックの音。思わず肩がビクリとふるえた。
「はい!」
「シレネです。失礼致します。ティアニス様。……あら、どこか行かれるのですか」
扉を開くといきなり目の前にいたので少々驚いたらしい。鉄仮面だからハタ目にはまったくわからないけれど、いつもより声が高かった。
「ああ、うん。そうだけど……なにか用事?」
「用事というほどではありませんが、とても良い茶葉が手に入ったのです。召し上がりませんか」
「茶葉? なんの?」
「カモミールです」
「カモミールのハーブティーかぁ。でも、ごめんね。これからお母様のところに行こうと思って……その後でもいい?」
「でしたら、リディア女王陛下のお部屋でご一緒に召し上がられてはいかがでしょう」
「あっ、そうね。それがいいわ」
ハーブティーはお母様も好んでよく飲む。気の利いた提案に二つ返事で同意した。
「では、ご用意致しますね」
「うん、ありがとう」
シレネは茶器を仕舞っている棚のほうへ歩いていく。棚の扉が開かれて、ガラスに一瞬自分の顔が映った。
眉間にしわがよっている。
これはシレネも驚くはずだ。内心で苦笑した。
剣を置くため、一度自分の部屋にもどった。置いた後「よし」と小さくかけ声を発して扉に向かう。
一週間ぶりにお母様のところへ──……
ドアノブに手をかける寸前でノックの音。思わず肩がビクリとふるえた。
「はい!」
「シレネです。失礼致します。ティアニス様。……あら、どこか行かれるのですか」
扉を開くといきなり目の前にいたので少々驚いたらしい。鉄仮面だからハタ目にはまったくわからないけれど、いつもより声が高かった。
「ああ、うん。そうだけど……なにか用事?」
「用事というほどではありませんが、とても良い茶葉が手に入ったのです。召し上がりませんか」
「茶葉? なんの?」
「カモミールです」
「カモミールのハーブティーかぁ。でも、ごめんね。これからお母様のところに行こうと思って……その後でもいい?」
「でしたら、リディア女王陛下のお部屋でご一緒に召し上がられてはいかがでしょう」
「あっ、そうね。それがいいわ」
ハーブティーはお母様も好んでよく飲む。気の利いた提案に二つ返事で同意した。
「では、ご用意致しますね」
「うん、ありがとう」
シレネは茶器を仕舞っている棚のほうへ歩いていく。棚の扉が開かれて、ガラスに一瞬自分の顔が映った。
眉間にしわがよっている。
これはシレネも驚くはずだ。内心で苦笑した。