大陸の彼方
「…サンタルム」
馬車が止まった。
馬車は、アランティウムの国の領土を巡回している。目的地を予め言っておけば、馬車はそこをルートに組み込んで運転してくれる。
吟遊詩人に話し掛けられた剣士が、外していた剣の鞘を腰に戻した。
「ありがとう」
袋から手間賃を出し、手綱を握る男に手渡した。
一瞬男の動きが止まったが、深々とお辞儀をして剣士を見送る。
馬車から降りて、振り返ることなく歩き始めた。
間を置いて馬の蹄鉄の音と、引かれていく幌の音が次第に遠くになっていく…
「グレン・バズ」
「…」
剣士がゆっくりと振り返る。吟遊詩人がにこっと笑って立っていた。
「翠の風…お噂はかねがね」
「人違いだと思うけど」
「貴方が依頼を受けて殲滅した盗賊の中にね。私の弟がね、居たのですよ」
グレン、と呼ばれた剣士の動きが止まった。
「やっぱり貴方でしたか、翠の風」
「…」
「貴方に依頼をお願いいたします…翠の風。勿論謝礼は払いましょう」
吟遊詩人はグレンの傍に立ち、肩にぽん、と手を置いた。
「くく。貴方は腕は立つようだが…まだまだ甘いようだ」
「?」
「ただカマを掛けただけですから。今の話はお気になさらず!」
吟遊詩人は悪戯っぽく笑って見せた。
馬車が止まった。
馬車は、アランティウムの国の領土を巡回している。目的地を予め言っておけば、馬車はそこをルートに組み込んで運転してくれる。
吟遊詩人に話し掛けられた剣士が、外していた剣の鞘を腰に戻した。
「ありがとう」
袋から手間賃を出し、手綱を握る男に手渡した。
一瞬男の動きが止まったが、深々とお辞儀をして剣士を見送る。
馬車から降りて、振り返ることなく歩き始めた。
間を置いて馬の蹄鉄の音と、引かれていく幌の音が次第に遠くになっていく…
「グレン・バズ」
「…」
剣士がゆっくりと振り返る。吟遊詩人がにこっと笑って立っていた。
「翠の風…お噂はかねがね」
「人違いだと思うけど」
「貴方が依頼を受けて殲滅した盗賊の中にね。私の弟がね、居たのですよ」
グレン、と呼ばれた剣士の動きが止まった。
「やっぱり貴方でしたか、翠の風」
「…」
「貴方に依頼をお願いいたします…翠の風。勿論謝礼は払いましょう」
吟遊詩人はグレンの傍に立ち、肩にぽん、と手を置いた。
「くく。貴方は腕は立つようだが…まだまだ甘いようだ」
「?」
「ただカマを掛けただけですから。今の話はお気になさらず!」
吟遊詩人は悪戯っぽく笑って見せた。