大陸の彼方
「私はマーガスト・レイ。吟遊詩人です」

「グレン・バズ。宜しく」

「貴方にお願いしたい依頼というのは…護衛です」

マーガストは真剣な面持ちでグレンを見た。
グレンは何も言わず話を聞いている。

「…」
「…」
「…」

「…おぉい!」

「え?」

「え?じゃなくて!他に何かあるだろ!!」

「いや、ただ護衛を頼みたいだけで…」

「誰に狙われてるとか!狙われるようになった理由とか!」

マーガストは、合点がいったように頷いた。

「全く…」

「いやいや、こういう依頼は初めてで…実は私、どうも奴らにとって大切な物を所有しているようなんです」

「大切な物?…奴ら?」

「ええ。…こちらなんですがね」

マーガストは荷物の中から分厚い本を取り出した。

「…古文書?」

「ええ。殆ど読めませんがね…」

表紙も随分ぼろぼろになっている。中は古代語がびっしりと綴られているようだ。

「フィブリノス古代語、か」

「何と。翠の風は古代語が分かるのか」

「まさか。カタチは分かるけど、読めはしない」

「いやいや、分かるだけ素晴らしい。しっかり勉学の知識も積んできた証拠ですよ」

それは本心のようで、マーガストは満足そうに頷いた。
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