大陸の彼方
マーガストは正直、グレンに会って驚いていた。

翠の風、としてキトルス大陸にその名を轟かせた剣士が、まさかこれほど若く、優しい男だと思わなかった。

もっと猛々しい人物を想像していたのだが…

しかしながら、持っている剣は素人のそれでは全く無く、手練の剣士であることは明らかである。

「ここだ」

同じく町外れの建物。
グレンはマーガストを先に入れ、後ろを確認する。

「追っ手は居ないみたいだな」

「あら、どなたかと思ったわ」

出迎えてくれたのは、中年の女性。美しく年を重ねているのが分かる。

「は、はじめまして…」

「只今戻りました」

グレンは丁寧に頭を下げた。持っていた袋を手渡す。

「あら、主人が喜ぶわ。どうぞ、貴方もあがって」

言われた通り、中に入る。整頓された室内。隅々まで清掃の行き届いた廊下。
それらを通って奥に進む。階段と、小部屋がある。

「マーガストはそこで。マーラさん、すみません」

「ええ。大丈夫よ。いただいたこちらを用意して待っているわね。マーガストさん、ね。どうぞ」

グレンは意味深に微笑み、階段を上がっていった。

「全く…殿方の心は分からないわね」

マーラは呆れたように笑った。
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