大陸の彼方
しばらくして、グレンと1人の初老の男性が下りてきた。

「君かね。古文書を持っていると言うのは」

「は、はい。マーガスト・レイと申します」

「アルブム博士。サンタルムの名医であり、古文書や魔導器の鑑定をしている方だ」

「名医、とは随分口が巧くなったものだね。グレン君」

アルブム博士は、マーガストに軽く会釈をした。
マーガストも慌てて深くお辞儀をした。

「では、早速見せてもらえるかね」

マーガストは荷物の中から古文書を出した。アルブム博士は、丁寧にそれを受け取り、表紙を開いた。

「グレン君、君はこれに目を通したかね」

「はい。フィブリノス古代語で記されていました」

「読み取れた単語はあったかい?」

グレンは正直に首を横に振った。

「恥ずかしながら、全く…」

アルブム博士は、それを聞いて笑顔で言った。

「まあ、そうだろうな」

ぱたん、と閉じて、アルブム博士も言った。

「私にも読めたものではない」

「!」

マーガストもグレンも、驚いたように顔を見合わせた。

「マーラ、リーズはどこに行った?」

「リーズちゃんは、今日はセージ大聖堂に…」

「フィブリノス古代語は、最も歴史の長い言葉でね。その中で何回も形を変えているのだよ。この古文書は、相当古いもののようだ」
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