ガンバレ、男子!

「啓太?入るわよ。陸、久しぶり。」


紗耶香(さやか)だった。


「なんだよ、姉ちゃん。入ってくんなよ。」


「いいじゃない。いちご、持ってきてやったんだから。」


そう言って、俺の隣にどかりと座った。


紗耶香は啓太の姉で、確か、今年24歳になったはずだ。歳が離れているせいか、小さい頃から啓太と一緒におもちゃにされていた記憶がある。・・・正直言って、苦手だ。

今日も、俺の姿を見るなり寄ってきた。条件反射で体が逃げる。紗耶香は気にもせず、にじり寄ってきて・・・俺の顎に手をかけて上を向かせた。品定めするように左右から顔を眺めてこんなことを言った。


「まー。陸。しばらく見ないうちに、いい男になっちゃってー。最近、どうなの?ん?私に隠れて、恋でもしてるんじゃないでしょうね?」


いきなり核心を突いてくるのは、昔からだ。啓太もそうだが、このうちの人たちは勘が鋭い家系なのかもしれない。


「えっ?いや、ええと、そんなこと・・・。」


嘘がつけないのは、俺の家系なのかもしれない。これでは、そうだと言っているようなものだ。


「あらまあ。図星?陸も大人になったのねえ。で?どうなの?まだキスもしていないなんて言うんじゃないでしょうね?」


「??!??」


話をしただけで心臓がバクバクするのだ。キスなんて・・・。


俺は相当面白い顔をしていたんだろう。堪りかねた啓太が吹き出し、


「やめとけよ、姉ちゃん。陸は純情なんだから。」


と庇ってくれた。

< 113 / 269 >

この作品をシェア

pagetop