ガンバレ、男子!
「啓太?入るわよ。陸、久しぶり。」
紗耶香(さやか)だった。
「なんだよ、姉ちゃん。入ってくんなよ。」
「いいじゃない。いちご、持ってきてやったんだから。」
そう言って、俺の隣にどかりと座った。
紗耶香は啓太の姉で、確か、今年24歳になったはずだ。歳が離れているせいか、小さい頃から啓太と一緒におもちゃにされていた記憶がある。・・・正直言って、苦手だ。
今日も、俺の姿を見るなり寄ってきた。条件反射で体が逃げる。紗耶香は気にもせず、にじり寄ってきて・・・俺の顎に手をかけて上を向かせた。品定めするように左右から顔を眺めてこんなことを言った。
「まー。陸。しばらく見ないうちに、いい男になっちゃってー。最近、どうなの?ん?私に隠れて、恋でもしてるんじゃないでしょうね?」
いきなり核心を突いてくるのは、昔からだ。啓太もそうだが、このうちの人たちは勘が鋭い家系なのかもしれない。
「えっ?いや、ええと、そんなこと・・・。」
嘘がつけないのは、俺の家系なのかもしれない。これでは、そうだと言っているようなものだ。
「あらまあ。図星?陸も大人になったのねえ。で?どうなの?まだキスもしていないなんて言うんじゃないでしょうね?」
「??!??」
話をしただけで心臓がバクバクするのだ。キスなんて・・・。
俺は相当面白い顔をしていたんだろう。堪りかねた啓太が吹き出し、
「やめとけよ、姉ちゃん。陸は純情なんだから。」
と庇ってくれた。