ガンバレ、男子!
今日は試験勉強をするために、というか、尚登に試験の対策を教わるために、啓太のうちに集まることになっていた。
部活もないし、早く帰ってきた俺は、帰りにスーパーに寄った。
母さんから、
“牛乳3本買ってきてね~っ!愛してるわよ、陸♪ chu!”
などというふざけたメールを受けたからだ。
「・・・ったく、女子高生じゃないんだからさ・・・」
ぶつぶつ言いながら、近所のスーパーで牛乳を探していると、すごい勢いでカートを押している女の子がいた。
・・・・・ちひろだった。
思わず背を向けて、熱心に牛乳の表示を見ているふりをしていると、
「あと、お豆腐と、ねぎと・・・・・あっ!あっち特売だ・・・!」
なんて声がしたかと思うと、俺の後ろをビュンと通り過ぎる気配がして、そして、遅れて、フワリといい香りがした。
「・・んだよ、気がつかないのかよ・・・」
自分で隠れるようなことをしたくせに、気がつかれないとちょっと残念、だなんて・・・。一体、俺はどうしたいんだ・・?
それに、あの急ぎぶりは何だろう。
慣れている風に買い物をしているのを見ると、やっぱり子供を育てる主婦なんじゃないかと思ったりもする。
そんな自分の中の勝手な想像に振り回されて、俺はなんだかぐったりしてしまった。
「早く牛乳買って、啓太んち行こう・・・・」