ガンバレ、男子!

それからの日々は、…思い出したくないほど大変だった。バスケ部のしごきも厳しいと思っていたが、演劇部の人達…というか、弥佳のソレとは比較にならなかった。何しろ目の色が違うのだ。情熱が、違うのだ。

私は、声の出し方から、立ち居振る舞い、男役としての一から全てを、弥佳から叩き込まれた。彼女の、演劇にかける情熱は、半端じゃ無かった。弥佳は夏休み中毎日、私のうちに通って来た。中学最後の夏は、地獄のしごきで過ぎ去っていった…。

夏休み中、みっちり一か月しごかれ、弥佳はやっと、こう言った。

「男役としての基礎は出来て来たわね…。これからの一か月は、自分を王子だと思って生活すること。あとは芝居ね…。」

そして夏休みが明けた。
久々に会った優雅には、

「ちひろ、何だか男っぽくなってない?」

と言われるほどの変わりぶりだった。

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