ガンバレ、男子!
そして迎えた文化祭当日。三日目昼の部の山場が私たちの劇だった。
演劇部としては、大成功だったと思う。会場は満員、立ち見もあふれるくらいだったのだから。
私も、腹を括って、王子役をやり切った。
最初は、姫の相手役という設定だったはずが、いつのまにか王子が主役の脚本に変わっていた。いや、弥佳の策略だったのかも知れない。最初から私を王子に仕立てる算段だったのかも―と弥佳の性格を知る今では思っている。
私が演じたのは世間知らずの王子。窮屈な王宮に嫌気がさし、お城を抜け出すのだ。庶民の世界を見て回るうち、花屋の娘と出会い、恋をする…と言う話だ。ヒロインである花屋の娘が弥佳だ。
私たちが舞台の上で永遠の愛を誓いあったときには、観客からキャーッという声があがり、泣いている子までいたらしい。
それ以来だ。
城川の王子と呼ばれ、女子からの嬌声を浴びるようになったのは…。