ガンバレ、男子!
「でもね、私はそれとは別に、劇をすることになって…」
ここでちひろは声を潜め、身体を近付けた。
わ…、いい匂い…
シャンプーの香りなのか、フワリと良い香りがした。
俺の気持ちなんて全く気がついていないんだろうなあ…。
それほどちひろのことを知っているわけじゃないけど、ちひろが鈍感なことは、俺でも分かる。その鈍さからくる無防備なところは、男にとっては危険だ。特にその子を好きだったりした場合、理性を保つのって、大変なんだと実感した。
「…陸くん?大丈夫?」
ますます近付いて、下から顔を覗きこんでくる。
うわっ、この角度…
知らないだろう、それを上目遣いというんだ!
俺は気持ちを落ち着かせ、
「…劇って…?」
と聞いた。