ガンバレ、男子!

「最近道場に呼ばれることが多いみたいね?啓太が寂しがってたわよ?陸が遊んでくれないって。」

そう言えば、最近啓太のうちにも行っていなかった。

「そうそう、今日は道場に顔出す、って言ってたわよ。暇があれば遊んでやって。」

紗耶香は、そう言い置くと、「じゃ、急ぐから」と、何も言えずにいる俺を置いて足早に去って行った。

紗耶香は、口は悪いし、性格に難あり、だが、弟思いではあるのだ。いつも、啓太のことを気にかけていて、啓太もそれを分かっているから、いろいろ言われても本気で怒ったりはしない。その辺は、男兄弟の関係とは違う。でも、女きょうだいのいない俺には、よくわからなかった。

俺はしばらく茫然と突っ立っていた。が、時間がないことを思い出し、走って道場に向かった。

その時、全く周りに気をつけていなかった。だから、俺たちの様子を、道路の反対側から見られているだなんて気が付いていなかった。

気が付いていれば、そして、声をかけていれば、ややこしいことにはならずに済んだはず、だなんて、その時の俺にはわかるはずもなかった・・・。

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