ガンバレ、男子!

私は、窓から稽古の様子を観察しながら、さっき見た光景を思い出していた。


買い物の前に本屋に行こうと思って道を歩いている時だった。

「あらー、陸!」

陸の名前が聞こえ、思わず振り返ると、道の向こうに陸と、・・・・女の人がいた。その人は、陸のほっぺたをつついたり、鼻をつまんだり、何やら親しげな様子だった。そんな2人を見ていたら・・・

ズキン・・・

なぜだか、胸が痛んだ。

私は、その女の人が去ってからも、陸がいなくなってからも、その場に立ちすくんで、しばらく動けなかった。

・・・綺麗な女の人、だったな・・。

大人の女のひと、って感じだった。

そういう場面を見て、自分がそんなにショックを受けるなんて、思っていなかったのに・・。

もしかして、彼女、とかだったり?

年上の女性が彼女ということだって、あり得るのだ。

まだそうだと決まった訳じゃないのに、私はそんな思いに捕われて、ヘコんでいた。

その後行ったはずの本屋では、ただ店内を歩いているだけで何も選べず・・・結局そのまま、夕飯の買い物をしようとスーパーに向かったのだった。


そこで、啓太に声をかけられたのだ。

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