ガンバレ、男子!
啓太は、私のことをまっすぐ見ていた。そして、ふっ、と笑うと、弥佳と一緒に布を見ている陸の方に視線を移しながら、こんなことを聞いた。

「ちひろちゃん。道場で陸が剣道をしているのを見て、どう思った?格好いいと思わなかった?」

「え・・っと、うん。すごい、カッコ、よかった、よ。」

突然聞かれて、思わず正直に答えてしまった。

啓太は、もう一度小さく笑うと、恥ずかしくて俯いた私の頭に、ポンと手を置いた。

「でしょ?俺ね、小さい頃から、陸にだけはかなわないと思って育ってきた。剣道ももちろんだけど、勉強とか、・・・性格とか。

あいつさ、普段穏やかで、滅多に怒らないんだよ。わかるだろ?・・・結構いじられキャラなんだけどさ、ムキになるし、からかいがいがあってさ。

・・でも、どれだけいじられても、本気で怒ったりはしないんだよ。基本的に、穏やかで優しいっていうのかな。子供に教えてるのを見て、そう思わなかった?人に、優しいスタンスなんだ。

ただ、試合のときには違ってさ。何て言うか・・・野生動物みたいな目、っていうの?するんだよ。対峙すると、わかる。

もともと体が大きいんだけど、それ以上に大きく見えるんだ。あの眼に吸い込まれるような、そんな気がする。もう、その時点で負けてるんだ。勝負にね。

・・・俺、思うに、あいつ、芯は熱い奴なんだと思う。今は、それが剣道にしか向いてないから、あまり見えてこないけど、それ以外に向き始めたら、情熱的なんだろうな、って思う。まだ、俺は見たことないけど。

ねえ、ちひろちゃん。俺はそうでもないけど、男って不器用なんだよ。思ったことは、ほとんど言えずにいるんだ。陸は特にそう。

だから、駆け引きとか、そう言うのも一切、出来ないと思ってて。うーんと、だからさ・・・、もし、陸のことで何か思ったら・・・、直接聞いた方がいいんじゃないか、って思うよ?変に悩んだり、しないでさ。」

啓太は、そう言って、もう一度、私の頭をポン、と叩いた。

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