ガンバレ、男子!
「へぇぇ・・・それで、そのちひろちゃんは、
毎朝同じ電車に乗ってて、
背が高くて、すらっとしてて、
髪が長くて、
可愛くて、
明るくて、
女の子にメチャクチャモテて、
高校生だけど、彼氏と子供がいるらしくて、
それで、
いい匂いで、や、柔らかぃ…んだねっ??」
「だから何で尚登が赤くなってんだって・・・」
「そうそう!最近陸がおかしい原因は、みーんな、それ!大好きなちひろちゃんのことで頭がいーっぱい、なんですよ~」
「ちょっ・・・、啓太!・・・まだ好き、とかじゃ・・・」
「あーあ。それのどこが好きじゃないって訳?明らかにお前、そのちひろちゃんが好きなんでしょうが!いい加減認めろって!
ホント、往生際が悪っていうか、情けないって言うか・・・。」
体育座りで俯いていた俺の背中をバシバシと叩きながら、啓太は呆れた顔で俺を見た。
「・・・だって、子供がいる・・・」
「それだってまだ本当にそうかどうかも分かんないんだろ?悩むなら確かめてからにしろよ!
あーーーーーっ!もうイライラするなあっ」
「まぁまぁ。僕、わかるよ、陸の気持ち。
その、ちひろちゃん?に子供がいるかどうか、調べたらいいんじゃない?僕、お父さんに聞いて興信所雇おうか?」
「は?興信所?!いや、そこまでしなくていいから!絶対、しなくていいから!自分で何とかするから、大丈夫!」
俺は焦って、早速携帯で電話をしようとする尚登を必死で止めた。
尚登はなぜ止められたのかわからないのか、キョトンとした顔で俺を見て、
「そう?必要だったらいつでも言ってね」
と携帯を置いた。
俺は尚登を時々恐ろしいと思う。大会社の社長子息だと、やっぱりちょっと住む世界が違うのかもしれない。
興信所なんて考えもしなかった・・・。
それにしても、自分で何とかしないと、大変なことになりそうだ。みんなにもバレちゃったしなあ・・・。
考え込んだ俺をチラリとみて、
「恋、だな」
ずっと黙って聞いていたヨシが、ぼそりとつぶやいた。