ガンバレ、男子!

「へぇぇ・・・それで、そのちひろちゃんは、

毎朝同じ電車に乗ってて、

背が高くて、すらっとしてて、

髪が長くて、

可愛くて、

明るくて、

女の子にメチャクチャモテて、

高校生だけど、彼氏と子供がいるらしくて、

それで、

いい匂いで、や、柔らかぃ…んだねっ??」

「だから何で尚登が赤くなってんだって・・・」

「そうそう!最近陸がおかしい原因は、みーんな、それ!大好きなちひろちゃんのことで頭がいーっぱい、なんですよ~」

「ちょっ・・・、啓太!・・・まだ好き、とかじゃ・・・」

「あーあ。それのどこが好きじゃないって訳?明らかにお前、そのちひろちゃんが好きなんでしょうが!いい加減認めろって!

ホント、往生際が悪っていうか、情けないって言うか・・・。」

体育座りで俯いていた俺の背中をバシバシと叩きながら、啓太は呆れた顔で俺を見た。

「・・・だって、子供がいる・・・」

「それだってまだ本当にそうかどうかも分かんないんだろ?悩むなら確かめてからにしろよ!

あーーーーーっ!もうイライラするなあっ」

「まぁまぁ。僕、わかるよ、陸の気持ち。

その、ちひろちゃん?に子供がいるかどうか、調べたらいいんじゃない?僕、お父さんに聞いて興信所雇おうか?」

「は?興信所?!いや、そこまでしなくていいから!絶対、しなくていいから!自分で何とかするから、大丈夫!」

俺は焦って、早速携帯で電話をしようとする尚登を必死で止めた。

尚登はなぜ止められたのかわからないのか、キョトンとした顔で俺を見て、

「そう?必要だったらいつでも言ってね」

と携帯を置いた。

俺は尚登を時々恐ろしいと思う。大会社の社長子息だと、やっぱりちょっと住む世界が違うのかもしれない。

興信所なんて考えもしなかった・・・。

それにしても、自分で何とかしないと、大変なことになりそうだ。みんなにもバレちゃったしなあ・・・。


考え込んだ俺をチラリとみて、

「恋、だな」

ずっと黙って聞いていたヨシが、ぼそりとつぶやいた。

< 19 / 269 >

この作品をシェア

pagetop