ガンバレ、男子!
…そういわれて、真っ先に頭に浮かんだのは…陸だった。
弥佳は私の顔を覗き込み、ニンマリと笑った。
「やっぱり、陸くん?」
「そ、それは…。」
図星をさされてしどろもどろになった私を、弥佳はジッと見て、こんなことを言った。
「ねえ、ちいちゃん。自分の気持ちから目を背けちゃダメだよ?ちいちゃんは自分の事には特に鈍いんだから。」
「え…?」
「よーく、考えること!いい?」
「わ、分かった…。」
弥佳の勢いに押されて、思わず返事をしてしまったけど、一体どういう意味だろう?
その後すぐチャイムが鳴ったから、弥佳にそれ以上聞けなかったけど…。
私は自分の席に戻りながら、弥佳に言われた事を思い返していた。
私の気持ち、か…。
あれ、でも弥佳は?誰がいいと思ってるんだろう?
人のことばっかりで、自分のことは言わないんだから…。
でも私はその時、知らなかったのだ。弥佳は言わなかったんじゃない、言えなかったんだってこと。そしてこの先も言うつもりはないんだってことを…。