ガンバレ、男子!

…そういわれて、真っ先に頭に浮かんだのは…陸だった。

弥佳は私の顔を覗き込み、ニンマリと笑った。

「やっぱり、陸くん?」

「そ、それは…。」

図星をさされてしどろもどろになった私を、弥佳はジッと見て、こんなことを言った。

「ねえ、ちいちゃん。自分の気持ちから目を背けちゃダメだよ?ちいちゃんは自分の事には特に鈍いんだから。」

「え…?」

「よーく、考えること!いい?」

「わ、分かった…。」

弥佳の勢いに押されて、思わず返事をしてしまったけど、一体どういう意味だろう?

その後すぐチャイムが鳴ったから、弥佳にそれ以上聞けなかったけど…。

私は自分の席に戻りながら、弥佳に言われた事を思い返していた。

私の気持ち、か…。

あれ、でも弥佳は?誰がいいと思ってるんだろう?
人のことばっかりで、自分のことは言わないんだから…。

でも私はその時、知らなかったのだ。弥佳は言わなかったんじゃない、言えなかったんだってこと。そしてこの先も言うつもりはないんだってことを…。

< 193 / 269 >

この作品をシェア

pagetop