ガンバレ、男子!


スロープには誰もいなかった。俺は大きく伸びをして、芝生に寝転がった。

青い空には、思いの外早いスピードで雲が流れていた。

気持ち、いいなあ。

爽やかな風が、自分の中のモヤモヤを吹き飛ばしてくれそうな気がする。

空を見上げると、今にもくっつきそうな二つの雲があった。二つは、ゆっくりゆっくり近付いて行く。

まるで、その二つの雲が、自分とちひろのように思えて来て、ずっと眺めていた。

その時だ。

「あっ…」

思わず声が出た。

大きな雲が後ろからやって来て、片方の雲をさらって行ったのだ。

残された雲は、取り残されたように、いつまでもそこにいた。


…そうか。

横から誰かにさらわれちゃう、ってこともあるんだよな…。

今までそんなこと考えなかった。けど、他にもちひろを好きなやつがいるかもしれないじゃないか…。

ムリとか、勇気が出ないとか、言ってる場合じゃないのかもしれない。

誰かに横取りされるのを黙って見ているよりは、告って玉砕する方がまだいい。

告白、するかな。

そう決めたら、不思議なことに気持ちが楽になった。

そして、それと同時に、急に眠気が襲って来た。

いつ、言おう…か、な…

ちょうど傾きかけた陽も暖かくて気持ちよく、俺はそのまま眠りに落ちてしまった…。


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