ガンバレ、男子!

文化祭最終日 劇


『人妻のあなたへ恋をしてしまった僕は、一体どうしたらいいのか…。』

『ひかるさま・・・。』

『ああ、そんな眼差しで僕を見ないでくれないか。あなたの瞳は僕を狂わせる…。』

『私を攫って・・・、攫ってください、ひかるさま!そして、遠い地で二人で暮らしましょう?』

今はちひろの劇の真っ最中。ちひろ演じるひかる王子が、人妻への愛を告白するシーン、クライマックスだ。もちろん、ヒロインは笠原さんだ。

2人は舞台上で見つめあい、手を取り合っている。

そんな2人に、観客は感極まって涙を流している。『ちひ・・・いえ、ひかるさまぁっ!』なんて声もたまにかかる。

俺たちは、特別にいい席を用意してもらっていて、舞台間近で観劇しているのだけど、そうでなければ劇を観ることさえできなかっただろう。

城川はキリスト教系の学校だ。6学年1500人が一堂に礼拝が出来るようにと、大きな講堂がある。周りを見回すと、当然座席は満席、通路に座っている人がいるし、立ち見も入りきれないくらいだ。


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