ガンバレ、男子!


その後はちひろを中心にして、劇の話で盛り上がった。

ちひろはみんなに褒められ、照れまくっていた。赤い顔をして、

「もう、止めてよ~!恥ずかしい…」

と言いながら、頭の上で手を振っていた。それでもみんなが褒め続けると、しまいには、

「あ~。もう。みんな、からかい過ぎっ!…ちょっと飲み物買ってくる!」

と席を立った。

「あ…俺も。」

ちひろを追いかけて、俺も立ち上がった。

「俺たちのも買ってきて~!適当でいいから。」

という啓太に、俺は頭の横で手を振って答え、教室を出た。

ゆっくり前を先を歩いていたちひろの横に並ぶと、ちひろが済まなそうに、

「ごめんね?付き合わせちゃったみたいで。」

なんて言いながら、俺の顔を覗いた。

不意打ちの上目遣いに、

ドクン!

心臓が跳ね上がった。

「や…、俺も喉渇いたし…。」

俺は、顔を見られたくなくて、横を向きながら答えた。

くそお…なんで俺は、一緒にいたかったとか、言えないかな…。

そんな俺を見て、ちひろは、笑ってこんなことを言った。

「でも、陸くんが一緒にきてくれて良かった。実は、一人で行くの、心細かったの。自動販売機の場所…ちょっと…暗いんだよね…。」

最後は聞き取れないくらい小さい声だった。

「もしかして…暗いの、怖い?」

「えっと、実は…。うん。高校生にもなって、暗いのがコワイだなんて恥ずかしいよね?…でも、怖いんだよね…。」

恥ずかしそうに俯くちひろ。

あぁ…。ここが学校の廊下なんかじゃなければ!

俺は抱き締めたい衝動を、どうにか抑え込んだ。

でも、触れずにはいられなくて、ちひろの頭をくしゃっと撫でてしまった。

ちひろは、目を見開いて俺を見つめたあと、

「ありがと」

と笑って言った。

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