ガンバレ、男子!
自分の気持ちを自覚してしまってから、俺は挙動不審になった、と思う。
自分でそう思うんだから、周りからどう見えていたかなんて、・・・・考えたくもない。
朝は、ちひろと会う確率の高い電車の、それも一番階段に近い車両に、必ず乗るようになった。駆け込み乗車をするちひろが、乗る可能性が高いからだ。
運よくちひろが乗ってきたときは、大変だ。
激しい動悸のせいで息は出来ないし、しまいにはジンワリ汗までかいたりする。でも、凝視すると不審に思われるから、なるべく見ないようにしてる。
まあたまに、文庫本の隙間からコッソリ見ちゃったりするんだけど。
今日のちひろは、珍しく早くから電車を待っていた。でも、全く俺には気がつかず、背筋を伸ばして列に並んでいた。
これだけ毎日同じ電車に乗り合わせているのに、あれ以来、一度も気がつかないなんて、もう俺の顔、覚えてないのかな?それとも、思い出したくもないから、気が付いていて、敢えて見ないようにしている、とか・・・。
この悲観的な思考回路をどうにかしたいと思いながら、考え始めると止まらない。
その時、前に一度見たことがある、ちひろの友達が乗ってきたのが見えた。