ガンバレ、男子!

 それからというもの、俺は車内で彼女の姿を探すようになった。

彼女はいつもギリギリのタイミングで電車に駆け込んできたし、何しろ目立つ容貌だったので、見つけるのには苦労しなかった。

大抵彼女は立って窓の外を眺めていたけど、たまに後輩らしき女生徒に声をかけられていることもあった。


今日も、途中から同じ車内に乗ってきた2人の中学生らしき女の子が、彼女のほうをちらちらと見ながら内緒話をしていた。



「ねぇ、あれ、ちひろ様じゃない?」

「ホントだっ…!きゃー、朝からラッキー!」

「話しかけてみない?」

「で、でも・・・。」

「大丈夫だって!ちひろ様って優しいから話してくれるよ・・・」



 そうか、彼女は“ちひろ”って言うんだ。

それにしても、様、って・・・。いや、あの2人、何か目がハートになっているような・・・。女子同士だよな・・・。そう言えばあの制服って、城川女子学園の制服じゃなかったっけ?
お嬢様学校だよなあ・・・。


なんて、呑気なことを俺は考えていた。


 その後も、何人もの女子が“ちひろ様”を遠巻きに見ていたり、話しかけたりするのを、見かけた。

すごい人気があるんだな、ってことはわかった。でも女子校で人気って、もしや、レ・・・いや、まだ決まった訳じゃない。でも・・・


 そんなある日、俺はものすごいショックな話を聞いてしまった。ホント、ちょっと想像もしていなかった話だった。


その日の朝、彼女、ちひろ(と呼んじゃおう・・・)、の友達らしき子が途中で乗ってきた。

その娘も目を惹く容貌で、まあ、平たく言うと美人で、ちょっときつい顔立ちにショートボブが良く似合っていた。

< 3 / 269 >

この作品をシェア

pagetop