ガンバレ、男子!
「おはよ、ちひろ」
「おはよーっ!朝会うなんて珍しいね!」
「昨日夜更かししたら寝坊しちゃった・・・」
「それもまた珍しいね!私はいつもギリギリだけど・・・」
確かにいつもギリギリだよな、と盗み聞きをしながら、俺は心の中でうんうんと頷いていた。
そのあとだ。ショッキングな言葉を聞いたのは。
「しょうがないんじゃない?ちひろは小さい子供がいるんだから・・・」
「子供?・・・・、ああ。まあねえ。まだ3歳だから、特に朝は手がかかるんだよね・・・」
!?!!!???!
こ、子供?まだ、高校生(たぶん)で、3歳の、子供っ?!??
レ・・・ズなのかもと思っていたら、実は、子持ち??
俺は、相当パニクってたと思う。もし、この様子を啓太が見ていたら、挙動不審で突っ込まれたこと確実だ。
「で、今朝も海くんたちのお弁当も、作ってきたの?」
「毎朝毎朝、ホントメニューに困るよねー。それでギリギリになってるのに、食べてるばっかりで手伝う素振りも見せないんだよね・・・男ってなんでああなんだろ。」
「まー。朝から、“男って”発言!やーらしー!」
「ちょ・・・違うからっっ!」
そこから先は聞いていなかった。・・・というか、聞こえていなかった。
“かいくん”、って、一緒に住んでる男なんだよな。あ、子供の父親・・・?!毎朝男と子供の世話して学校に行っているのか・・・。まだ俺と変わらないくらいの歳だよな?
ああ、恋する前に、もう失恋かよ・・・・。勘弁してくれ・・・。
それも、かなり最悪な、失恋の仕方だ・・。いや、まあ、まだ好きって訳じゃなかったから、いいけど。
話したこともないし、女子に随分モテてるみたいだし、実際どんな娘かわからないし!
そう自分を納得させて、俺は電車を降りた。・・・降りたら、知らない駅だった。
・・・やっぱり相当動揺していたのかもしれない。
それが数日前の話。
そして、今日。今朝、電車の中であった、ちょっとしたハプニング。
それで俺は、とうとう頭が変になってしまったらしい。