ガンバレ、男子!
盆踊り、そして
お腹もいっぱいだし、お土産も買ったし(お土産を買ったのは私だけだけど)、あとはイベントを見て回ろうということになった。
「イベントって、何やるんでしたっけ?」
愛奈が聞くと、すかさず田村くんが、手帳を取り出した。ちらっと覗いたら、今日の夏祭りの詳細が小さな文字で、びっしりと書かれていて・・・ちょっとびっくりした。
どうして夏祭りにそんな気合いを入れているんだろう・・・?
田村くんは、眼鏡を上げながら答えた。
「ええと、今からだと・・・・6時から盆踊り、ブラスバンドが6時半から、花火は8時半からかな・・・。・・・」
「愛奈。俺たちはもう帰るぞ。お前が夕飯までに帰らないと、父さんが心配するからな・・・。」
「えーっ!?でもっ・・・。わかった。」
愛奈は私たちをちょっと見てから、諦めたように、渋々頷いた。
「ちひろさま、今日は本当に楽しかったです。芳川様も笠原様も、優しくしてくださって、嬉しかったです。もうこんな無理は言いませんから・・・。」
そこで愛奈はちょっと言葉を区切り、言いにくそうに言った。
「でも、あの、あたし、ちひろさまのファンのままでいてもいいですか・・・?」
愛奈は、小さな体をさらに小さくして、泣きそうな顔をしていた。
「もちろんだよ。ありがとう。」
私は、笑って言った。ファンです、なんて言われるのは未だに慣れないけど、でも、気持ちは素直に嬉しいと思った。
「ありがとうございますっ!」
深々と頭を下げた愛奈の肩を支え、まっすぐ立たせながら、
「さ、顔上げて?今日は私たちも楽しかったよ。でも、みんなには秘密にね。気をつけて帰るんだよ。」
愛奈は名残惜しそうに何度も振り返っていたが、兄に促され、帰って行った。
「さて、じゃあ、残りは踊っちゃいますか?」
啓太がおどけて言って、ぞろぞろと盆踊り会場に向かった。