ガンバレ、男子!
「ちひろさま~っ!」
名前を呼ばれて振り向くと、廊下の窓から下級生がこちらに手を振っていた。
私は条件反射で、ニッコリ笑うと、手を振り返した。
すると、下級生たちは真っ赤になって、きゃーっと叫んで走り去って行った。
そんな様子を見て、2人は顔を見合わせ、溜息をついていた。
「・・・ホント、どうしてちひろが、こんなにもモテるのかしら。」
「ねーっ。中身は王子というよりはむしろ主婦なのにねーっ」
「・・・うーん。自分でも不思議だよ。だって、別にこの性格隠しているわけじゃないのにさー。勘違いしてくれちゃってるっていうか・・・。」
「まあねえ。手を振り返すそのノリの良さもウケているのかも・・・。でも、さっぱりした性格なのは確かだし、その辺に男っぽさを感じて、・・萌えるのかしら」
「モテるのは女子限定だけどねーっ。そうそう、で、その抱きつき男は、カッコ良かった?」
抱きつき男・・・どんなネーミング・・・。
どういう子だったかなあ・・・。
「背は高くて、190cm近くあったんじゃないかなあ。歳はおんなじくらい?で、ちょっと童顔だったよ。赤くなってたから、もしかすると照れ屋さんかも。
細いけど、力も強かったし、胸板も硬くて厚かった、と思う。」
「きゃーっ!ちぃちゃん、やらしーっ!抱きしめられた人は違うねーっ」
「ちょっと!誤解するようなこと、言うな!」
「・・・そこまであけすけに報告しちゃうところがちひろよね。
それ以上何にも無いって感じがするわ・・・・」
「ないない!何があるって言うのよー。もう2人ともさぁー。」
その日はこんな感じで結構盛り上がって、本当は今度会ったら謝ろうとかお礼を言おうとかいろいろ思っていたのだけど、
何日か経つと、私はそんなことがあったことをすっかり忘れてしまっていた。