ガンバレ、男子!
何とか立てたものの、ゆっくり、足を引きずるようにしか歩けない。
「…ごめんね、陸くん。折角のお祭りなのに…」
見上げると、陸は笑って言った。
「全然!俺はむしろ…」
「?」
「…いや、何でもない…。ええと、歩けそう?早くこの人込みを抜けたいよね…。また踏まれたりしたら…」
「…それは、考えたくもない…」
頑張って歩こうとしたけど、人込みを掻分けて進むのは難しかった。
陸が私を守るように手を回してくれていたが、それでも結構、人にぶつかる。ぶつかって、足を踏ん張る度、激痛が走った。
噛み締めている唇まで痛くなってきた。自然と無言になり、顔も俯きがちだった。
歩いている間中、陸が低い声でずっと話をしてくれていた。何の話だったかは覚えていない。けど、私の気を紛らわそうとしてくれているんだろう、ということは分かった。
最初に会ったときから、声のいい人だな、とは思っていた。頭の上から響くその声は、心地よく、穏やかな気持ちにさせてくれた。
その時・・・。
陸が、急に黙った。