君の声が聞こえる
ボクとワタシのプロローグ
私のプロローグ
《秋山良枝編》
私、秋山良枝が須藤雅巳に出会ったのは小学校五年の夏だった。
クラスが違う彼女と私は接点など一切なく、名前ぐらいは知っていたが、廊下ですれ違う事があっても目を合わす事すらない。そんな存在だった。
もし、あの日、あの場所で雅巳のあの姿を見なかったら、私達は同じ学校に通っていたという共通点以外、何の接点もなかったに違いない。
その日はとても蒸し暑くて、健康そのものの体を持つ私でさえ、ダルさを覚えた。疲労感とでも言うのだろうか、そんな感覚が体中を蝕んでいた。
「また、やっちゃったぁ」
呟きながら、給食コンテナーに向かう私は、こういう事が多い。もともと、どこか抜けている性格をしているのだ。
給食当番のエプロンを着込み、顔半分を隠してしまうガーゼのマスクと髪を覆い隠す白い布のキャップは、たとえ夏でなくても暑苦しい。マスクの中は自分の唾で湿って不快度指数は100%、と言ったところだった。
「それにしてもパンにつけるジャムなんて置いてあったっけ?」
私の頭の中では、パンの入った四角い入れ物を取りに行った時の記憶を呼び戻そうとしていたが、思い出す事が出来なかった。
《秋山良枝編》
私、秋山良枝が須藤雅巳に出会ったのは小学校五年の夏だった。
クラスが違う彼女と私は接点など一切なく、名前ぐらいは知っていたが、廊下ですれ違う事があっても目を合わす事すらない。そんな存在だった。
もし、あの日、あの場所で雅巳のあの姿を見なかったら、私達は同じ学校に通っていたという共通点以外、何の接点もなかったに違いない。
その日はとても蒸し暑くて、健康そのものの体を持つ私でさえ、ダルさを覚えた。疲労感とでも言うのだろうか、そんな感覚が体中を蝕んでいた。
「また、やっちゃったぁ」
呟きながら、給食コンテナーに向かう私は、こういう事が多い。もともと、どこか抜けている性格をしているのだ。
給食当番のエプロンを着込み、顔半分を隠してしまうガーゼのマスクと髪を覆い隠す白い布のキャップは、たとえ夏でなくても暑苦しい。マスクの中は自分の唾で湿って不快度指数は100%、と言ったところだった。
「それにしてもパンにつけるジャムなんて置いてあったっけ?」
私の頭の中では、パンの入った四角い入れ物を取りに行った時の記憶を呼び戻そうとしていたが、思い出す事が出来なかった。