君の声が聞こえる
浪人時代に車の免許を取得していた僕は運転手として借り出される事になった。

 親から車を借り、事前に決められていた学生を乗せて戸隠に向かう。

 残念な事に、雅巳は四年生の車の乗る事が決まっていたらしい。まあ、限りなくペーパードライバーに近い僕の運転する車に乗るより、先輩の車に乗ったほうが安全だからいいんだけどさ(負け惜しみを言ってみる)。

昼過ぎに目的地に着いた川原ゼミの生徒達は昼食を取ってからすぐに夜まで講座の発表会に入った。

 二日目も同じような感じだ。朝から晩まで生徒が個人個人でまとめたレポートの発表をし、議論を交し合った。僕の発表したのは『未熟児網膜症訴訟について』だった。

 この未熟児網膜症訴訟というのは、未熟児を保育器で育てる際に適切な量の酸素が供給されず、不適切な量の酸素を保育器に入れた事によって未熟児が網膜症になってしまったという内容の訴訟についてだ。今でいう医療事故が認められるかどうかという難しい問題をレポートにまとめ発表した。

初めて先輩方の前で発表する事で戸惑い気味の僕に、先輩たちの洗礼はすごかった。
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