君の声が聞こえる
 散々、勉強不足な部分を突っ込まれ、しどろもどろと答える僕は発表が終わりになると心底ホッとして体中の力が抜けたような気がした。

 一方、雅巳は「自衛隊の存在意義について」というレポートを発表していた。

 日本は二次世界大戦後、法律的にも武力というものを放棄したはずだった。それなのに、存在する自衛隊という存在について、賛否両論の立場を盛り込んだしっかりした内容のレポートを雅巳は落ち着いた様子で発表した。

 強面の先輩たちの攻撃にも冷静に対応し、自分の考えと現状を分析した結果をはっきりと表現していた。

そんな雅巳は性別関係なく本当にカッコイイと思ってしまう。

 ここでようやく僕はゼミ合宿が本当に勉強を目的に来ているものなのだという事を実感させられる。

戸隠という空気と環境の良いところで自然と触れあたりするんだろうと漠然とした期待のようなものを抱いていた僕としては少しがっかりだったが、学生の本分は勉学なのだから仕方ないだろう。

 一日目と違う事といえば、夜になって合宿所の近くにあるバーのような店で学生同士の交流を深めたことぐらいだろうか。

 雅巳はウーロン茶を飲んでいた。
< 124 / 225 >

この作品をシェア

pagetop