君の声が聞こえる
おそらくお酒は体に良くないし、心臓にも負担をかけてしまうのだろう。

雅巳はウーロン茶を飲みながらも、先輩たちの相手をしていた。

雅巳は男の先輩にも女の先輩にも可愛がられていた。雅巳ほどの美人になると同性でも張り合う気持ちはなくなるのかもしれない。

張り合っても適わないのが分かっているから張り合わない。それは合理的な事でもあった。

 雅巳はたくさんの友人や先輩に囲まれ、楽しそうだった。

同級生達が、チャンスがあれば雅巳と親しくなりたいと思っていたのを僕は知っている。

ただ常に僕か良枝がガードしている雅巳に近付くのは至難の業だったに違いない。

しかし、戸隠の開放的な自然やみんなで過ごす楽しい時間が雅巳を解き放っている。

僕にしたって、ゼミのみんなで飲んでいる時に雅巳にべったりと言うわけにもいかない。

結果、雅巳とお近付きになりたい人々が今という時を逃すはずがなく、雅巳に群がっているわけである。

 僕と一緒にいる時とは違う笑顔を振り撒いている、そんな雅巳を見ながらどこか寂しいような気持ちになってしまう。

 雅巳は僕のなんだぞ!と叫びながら雅巳の群がる人々を蹴散らしたい気持ちにさえなった。
< 125 / 225 >

この作品をシェア

pagetop