君の声が聞こえる
 雅巳の言葉に「勉強ばかりなのに?」とからかうように言った僕に雅巳の笑顔が飛び込んできた。

「だって、加藤とこんなに綺麗な星空が見れたじゃない」

 笑顔を向けた雅巳は満天の星空よりもずっと輝いて見えた。


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 翌日は午前中に解散する事になった。

 雅巳の顔色が悪いと、気を遣ってくれた先輩方のおかげで、雅巳は僕の車でまっすぐ、地元に帰る事になった。他の学生たちは途中で寄り道するグループが多いらしく、他の車に乗り込んだらしい。

 つまりは、帰り道は雅巳と二人きりなのだ。

 たった二時間の道のりである。それでも合宿中は一緒にいられる時間が少なかったから、すごくうれしかった。

 三十分ほど車を走らせた頃、助手席の雅巳が「どこか寄らない?」と声を掛けてきた。

「でも……具合悪いんだろ?疲れが出ているみたいだし。早く帰ったほうがいいんじゃないのか?」

 僕の言葉に雅巳が小さく笑った。

「ふふふ、私は元気よ」

 雅巳のその口調に疲れや具合の悪さなど感じる事は出来なかった。

「え?まさか……」

「そう。そのまさかよ。加藤と二人きりになりたかったから、ちょっぴり芝居しちゃった」
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