君の声が聞こえる
風が出てきて貸しボートの返す時間が迫っていた。
「戻ろう……」
残念そうな雅巳の声が幸福な時間の終わりを告げた。
それから僕達は湖から歩いていける場所にある蕎麦屋で昼食の蕎麦を食べて、湖の周りを散歩した。
澄んだ空気が僕達を包み、何もかもが幸せ色、と言っていいような気がした。
「須藤」
「何?」
「また来ような」
「……そうね」
その時の僕は、雅巳がいなくなってしまうなんて事は想像も出来なかった。
僕の隣にいる人は永遠にその姿のまま僕の隣で存在するんだと信じて疑わなかった。
僕達が自然を堪能して湖を離れた頃には夕方が近付いていた。昼間の暑さが遠のき、夕方になる時の心地よい風が僕達の頬をなでた。
その風はもう秋の匂いを運んでいた。
僕はまた車を走らせた。
車内での僕達は無口だった。
まあ、ただ単に僕が運転に慣れていなくて話すどころじゃなかったのもあるし、雅巳もその辺の事は分かっているみたいで、僕に話し掛けて来なかったのもある。
大切な雅巳が助手席に乗っているのに事故をおこすわけにいかない、というのが僕の心の中を大きく占めていた。だから、運転に集中するし、自然と無口になる。
「戻ろう……」
残念そうな雅巳の声が幸福な時間の終わりを告げた。
それから僕達は湖から歩いていける場所にある蕎麦屋で昼食の蕎麦を食べて、湖の周りを散歩した。
澄んだ空気が僕達を包み、何もかもが幸せ色、と言っていいような気がした。
「須藤」
「何?」
「また来ような」
「……そうね」
その時の僕は、雅巳がいなくなってしまうなんて事は想像も出来なかった。
僕の隣にいる人は永遠にその姿のまま僕の隣で存在するんだと信じて疑わなかった。
僕達が自然を堪能して湖を離れた頃には夕方が近付いていた。昼間の暑さが遠のき、夕方になる時の心地よい風が僕達の頬をなでた。
その風はもう秋の匂いを運んでいた。
僕はまた車を走らせた。
車内での僕達は無口だった。
まあ、ただ単に僕が運転に慣れていなくて話すどころじゃなかったのもあるし、雅巳もその辺の事は分かっているみたいで、僕に話し掛けて来なかったのもある。
大切な雅巳が助手席に乗っているのに事故をおこすわけにいかない、というのが僕の心の中を大きく占めていた。だから、運転に集中するし、自然と無口になる。