君の声が聞こえる
私はそれが当然かのように、その椅子に腰を下ろした。

 雅巳の隣にいると、私はいつも妙に安心する。ここが私の居場所だという安心感は何にも変えがたいものだった。

「須藤の友達?」

 不意に雅巳の右隣にいた男子生徒が雅巳に声をかけた。

「え?ああ、そう。そうか。加藤は良枝の事知らないんだっけ?この子は秋山良枝って言うの。小学校からずっと一緒で私の親友よ」

 親友、という響きが私はとても好きだ。雅巳の特別な存在である事を認めてもらっている気がする。

「そうなんだ。俺、加藤睦月って言うんだ。秋山さん、よろしくな」

 加藤睦月と名乗った男子生徒は、とても精悍な顔をしていた。大柄なわりに笑顔は少年のようで、そのギャップがとっても魅力的だった。今まで私の周りにはいないタイプだ。

「秋山良枝です。よろしく」

 私が頭を軽く下げると、加藤君が笑った。

「秋山さんって女の子らしいんだな。誰かさんとは大違いだ」

 笑って言いながら、加藤君は雅巳の事を見た。雅巳は小さく膨れながら「どーせ」と頬を膨らませた。

「私は女の子らしくないですよーだ!」

 私はこんな雅巳を見るのは初めてなような気がする。
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