君の声が聞こえる
もし今でなくても、数年後にはそうなっていたはずだ。

僕はこれから先も雅巳以外の女を好きになることはないし、雅巳だって僕以外の男の事を好きになってもらっては困る。

結婚するなら相手は雅巳しか考えられない。

僕の中ではそれが、数年早まっただけの話に過ぎなかった。

 これから雅巳は俺の奥さんで、雅巳と僕の子供が生まれてきて、幸せな家庭を築いていくんだ。

そんな構図で頭の中がいっぱいになった。

「加藤!ちょっと待って。落ち着いて!」

 雅巳の方が僕を冷静にさせようと苦労している。

「待ったって俺の考えは変わらないよ。俺は須藤と結婚して、須藤とお腹の中の子供と家族になるんだ」

「簡単に言わないで!大学はどうするの?」

「辞めるよ。辞めて働く」

「そんなの加藤の両親が承知するわけないでしょ!」

 僕は雅巳が声を荒げるのを初めて見たような気がする。

そして、それをさせているのが僕自身なのだということを僕は自覚していた。雅巳は僕と出会って変わってきた。

自分の気持ちを表現するようになり、感情表現が豊かになった。
「関係ないよ。親なんて。俺は須藤さえいてくれたらそれでいい」

 雅巳の瞳が潤んでいた。
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