君の声が聞こえる
 雅巳の母親に挨拶に行って事情を説明し、僕の両親にも二人で会いに行った。

 雅巳の母親は気が抜けるぐらい、あっさりと「この子がそれでいいって言うなら、私は応援するわよ」と言ってくれたのだが、僕の両親は烈火のごとくの勢いで、僕と雅巳の事を大反対したのだ。

まあ普通に考えれば、僕の両親の反応が普通なのかも知れない。

 母親は泣いていた。

「あんたをそんな子に育てた覚えはないよ」

 決して、美人とは言いがたい僕の母親だが、普段は穏やかで優しい人だった。

そんな母親を泣かせてしまった事に少し心が痛んだが、僕は雅巳と生きていくと決めたのだ。

いくら母親の涙でも、それを覆す事はできない。

「お前たちはまだ学生だろう。親に学費を出してもらっている立場でありながら、結婚するだと?世間をなめるんじゃない!」

 父親は僕に手を上げ、「勘当だ!」と怒鳴った。

 雅巳はそんな僕達の混乱しきった様子を悲しげに見ていた。

「あの……」

 雅巳の遠慮がちな声に僕の両親の視線が集まる。父親は明らかに蔑むような目で雅巳を見ていた。

「睦月君には今まで大学に通ってもらうつもりでいます……。私は、このまま大学に通うのは無理ですが……」
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