君の声が聞こえる
 雅巳の言葉に僕の父親は勝ち誇ったように、だから世間知らずの子供は……という表情をした。

「何を言っているんだ。結婚とはそんな楽なものじゃない。大体、あんた、子供が生まれたら、そっちにもお金がかかるだろ?生活費だってかかるんだ。お金というものはだね、働かなければ得る事ができないものなのだよ!私達は君達が結婚して、子供を生むと言い張るなら、一切の援助を絶つ。そのつもりでいなさい!睦月、もしこの家にいたかったら、そのお嬢さんにお腹の中の子供は堕してもらってちゃんと別れなさい。お前にはこんなふしだらな娘は似合わん」

 子供を堕す?

 ふしだらな娘……だと?

 僕は雅巳の事を何も知らないくせに、勝手な事を言う両親に腹を立てた。雅巳の表情もショックで呆然と言った感じだ。今まで雅巳は「ふしだら」などと言われた事はなかったのだろう。

「勘当だっていいよ。構わない!俺は雅巳さえいればいい。これから二人で幸せな家庭を築くんだ!」

 そう怒鳴り返した僕は雅巳の手をつかんで、二十年間世話になった生家を後にした。

 家の外に出ると雅巳は呆れた様な口調で僕をたしなめた。

「加藤……駄目だよ。あんな言い方したら……」
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