君の声が聞こえる
 お願い!雅巳、そんな事はないって言ってよ!

「ごめんなさい。弱音を吐いたわ。出産を控えて気弱になっているのかしらね。でも、そうね……もし私に何かあったら、この子はあなたに頼みたいの」

 雅巳は言葉を変えたが、表情は真剣だった。

 だから、私は子供のようにワンワンと声をあげて泣き出していた。

 雅巳はそんな私を抱きしめて頭を撫でた。

何度も「ごめんね」という言葉を繰り返しながら。


雅巳は泣き止まない私の手を引いて雅巳のアパートまで連れて帰った。雅巳は私に「まさか、あんな所であんな泣き方するとは思わなかったわ」と呆れたように言った。

そう言われても、私は泣き止む事ができなかった。

「雅巳が死んだらいやだよぅ」

 しゃくりあげる私の涙を拭きながらも雅巳は困ったような表情を浮かべた。

「雅巳……私、雅巳が好きなの」

「知っているわよ」

 冷たい濡れたタオルで雅巳が私の腫れた目を冷やしてくれる。

「そんな悲しい事を言わないでよぅ」

「良枝……」

 これではまるで子供だ。自分でも分かっている。こんな我が侭を言ったって雅巳を困らせるだけで、現実は変わらない。

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