君の声が聞こえる
命の代償
(by・睦月)
一瞬、時間が止まった。目の前にいる義母の言葉が知らない国の言葉のように、耳の中を通り過ぎる。
「嘘だ……。だって雅巳は帝王切開にすれば心臓に負担はかからないって……」
僕のうめく様な呟きに、義母の気遣わし気な視線を注いだ。それでさえ、何だか煩わしく感じて僕は頭を抱えた。
「雅巳に、あなたには絶対に言わないでって言われていたの。私も言うつもりはなかったけれど、あの子は誰もいない所で無理をする子だからあなたには知らせるべきだと思ったのよ。それにあなたはあの子の夫だもの。妻の体の事は知る権利があるわ」
「そんな……それじゃ、俺は……雅巳の命を削る事に同意していたって事なのか……?」
「自分を責めないで。それを言ったら、私だって同罪よ。私はあなたよりひどいわ。私はあの子の状態を知っていて、子供を産む事に協力するって言ったのよ」
「どうして!どうして!もっと早く言ってくれなかったんだよ!」
義母を責めるのが間違っている事は分かっていた。雅巳の事だ。もし反対したとしても、子供を産むと言い張っただろう。
(by・睦月)
一瞬、時間が止まった。目の前にいる義母の言葉が知らない国の言葉のように、耳の中を通り過ぎる。
「嘘だ……。だって雅巳は帝王切開にすれば心臓に負担はかからないって……」
僕のうめく様な呟きに、義母の気遣わし気な視線を注いだ。それでさえ、何だか煩わしく感じて僕は頭を抱えた。
「雅巳に、あなたには絶対に言わないでって言われていたの。私も言うつもりはなかったけれど、あの子は誰もいない所で無理をする子だからあなたには知らせるべきだと思ったのよ。それにあなたはあの子の夫だもの。妻の体の事は知る権利があるわ」
「そんな……それじゃ、俺は……雅巳の命を削る事に同意していたって事なのか……?」
「自分を責めないで。それを言ったら、私だって同罪よ。私はあなたよりひどいわ。私はあの子の状態を知っていて、子供を産む事に協力するって言ったのよ」
「どうして!どうして!もっと早く言ってくれなかったんだよ!」
義母を責めるのが間違っている事は分かっていた。雅巳の事だ。もし反対したとしても、子供を産むと言い張っただろう。