君の声が聞こえる
「僕の阿修羅像様だあ~、なんてあのメガネの部長、良枝を見て興奮していたね」

 人の悪い思い出し笑いをする雅巳に私は頬を膨らませた。

 あの時、雅巳が私を連れて逃げ出さなかったら、本当に仏像同好会なる怪しげな同好会に引っ張り込まれていたかもしれない。

 とにかく、私は人の押しや迫られる事に弱かった。

「私、サークル入るのやめるわ!」

「そうなの?」

「だって、入りたいところなかったもの」

 そうなのだ。仏像同好会ほど変な同好会は稀だが、どこも興味を惹かれないとでも言うのだろうか?

変な学生運動に参加する気にもならないし、とりあえず、サークルや同好会に入ることは断念した。

 雅巳の様子を見てもサークルに入るつもりなど全くないようである。

「雅巳だって入りたいサークルなかったんでしょ?」

「なかった」

「だよね」

笑顔で答えて大学の北門をくぐろうとした時、そこに見覚えのある顔を見つけて立ち止まった。

自然に、雅巳の足も止まる。

 雅巳の視線は自然にその人に向けられ、その人も私達に気付いた。
「あ、須藤じゃん」

「加藤?どこで何やっているの?」

 北門の前で、加藤君と同じくらい背の高い人と何やら話していたようだ。
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