君の声が聞こえる
 雅巳の母親から渡された雅巳の手紙を胸に抱きながら、私はその封筒から雅巳のぬくもりを感じたような気がして、私は複雑な感情を込めた吐息を一つ洩らしたのだった。





 ピンクの封筒の中には、封筒とお揃いの無地の便箋が入っていて雅巳らしい丁寧な字で、私への手紙がしたためられていた。

『  親愛なる良枝へ

 結果的に嘘をつく事になってしまったことをまず謝らせて下さい。この手紙を良枝が読んでいるという事は私がこの世にはいないという事で、私は良枝に嘘をついてしまった事になってしまいますね。

その事実が良枝を深く傷つけてしまうのではないか、とそれだけが心配です。

 良枝、私の死を悲しまないでください。私は遅かれ早かれ、こうなる運命だったのよ。

 良枝には、はっきりとした私の病状を話した事がなかったけれど、私は生まれた時から心臓に欠陥があって十歳まで生きられればいい方だと言われていました。そんな私が十一歳のときに良枝に会ったのです。

あなたと仲良くなれた事、それだけでも私には素晴らしい奇跡でした。

神様はそれだけでなく私に、沢山の奇跡を下さいました。
< 194 / 225 >

この作品をシェア

pagetop