君の声が聞こえる
 だから、睦月はあなたにあげる。

きっと、今の睦月は私のことで混乱していて苦しんでいると思うの。

それでも、良枝が側にいてくれたら、睦月は立ち直れる。

睦月は良枝を好きになる。

私には分かるの。

だって、私の大好きな人達の事だもの。

幸せになってね。

ただ一つ心残りなのは、これから生まれて来るであろう私の赤ちゃんのこと。

私は卑怯な事をしたわ。この子の命をあなたに託した。

あの時、あなたにこの子の命を託したのは、近い将来子のこの存在が、あなたを苦しめると思ったから。

そのくせ、あなたに「元気な赤ちゃんを産んで」と言われた時の私の喜びは言葉では言い表せない。

もし、良枝が私の最期の我が侭を聞き入れてくれるなら、私の赤ちゃんをあなたと睦月に育てて欲しいの。

一番愛すべき命を一番愛する人たちに託したい。

勝手を承知でお願いするわ。もし、良枝が私の事を好きでいてくれるのなら、私の赤ちゃんを私と同じくらい好きになってあげて。

お願いよ。 


本当に自分の事ばかりで嫌になるわね。手紙を書いていて自分でも呆れてしまう。

私はこんなに自己中心的な考えを持つ人間だったのだという事を思い知らされたわ。
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