君の声が聞こえる



雅巳の死から二年。

 良枝によって雅樹と名付けられた我が子は、二歳になった。

雅樹は驚くほど雅巳によく似ているのだ。

ここ最近は、まるで雅巳が生まれ変わったようだと、時々考えては、その考えを打ち消す日々が続いている。

 雅巳は雅巳で、雅樹は雅樹であることを忘れないようにしなければいけない。

たとえ、どんなに似ていても全くの別の人格を持った人間なのだから。

 雅樹が一番初めに話した言葉は『パパ』と『ママ』だった。

 雅樹は僕を見てパパと言い、良枝を見てママと言った。

 僕は良枝と結婚はしていない。

それでも良枝は僕が仕事に行っている間、毎日のように雅樹の面倒を見たり、保育園に送り迎えに行ったりと、まるで雅樹の母親のように接していた。

だから、雅樹が良枝を『ママ』と思うのは仕方ない事と言えた。

 良枝は雅樹にママと呼ばれて本当に嬉しそうだった。

 雅樹には良枝が必要だ。そして、良枝にも雅樹が必要なのだ。

 いまさら、この二人を引き離す事など誰にも出来ないだろう。

 雅巳、僕は君を愛しいてる。その気持ちは今でも変わっていない。

それどころか雅巳への気持ちは雪のように今でも積もり続けている。
< 206 / 225 >

この作品をシェア

pagetop