君の声が聞こえる
しかし、生活は変わってしまった。
今の僕には雅樹も良枝もかけがえのないない存在になってしまった。
僕はこの二人のために出来る事をしたい。
今の僕がこの二人に出来ること。
それは二人を本当の家族にする事じゃないかと思っているんだ。
雅巳、君なら分かってくれるだろう?
僕は雅巳のお墓に手を合わせながら心の中で話し掛けていた。
『いいのよ、分かっているわ。幸せになってね』
雅巳が僕にそう語りかけているような気がするのは僕の都合のいい勝手な解釈だろうか?
今回の月命日の墓参りは、雅巳にその報告をしに来た。雅巳を忘れる事は出来ない。
それでも僕は僕の人生を生きていかなければいけないんだ。
僕は雅巳の墓をもう一度拝んで、その場を去ろうとした。
しかし、その時に、雅巳の母親がこちらに向かって来ているのに気が付いた。
かつてお義母さんと呼んだ人は、相変わらず美しかった。
今でもお義母さんと呼んでもいいのかもしれない。
しかし、僕は雅巳を失った日からこの人をお義母さんと呼ぶのはやめてしまった。
「こんにちは。加藤君」
挨拶されて無視するわけにもいかずに、僕は軽く頭を下げた。
「毎月、月命日には来てくれて有難う」