君の声が聞こえる
私が何か言う隙を与えなかったといった方が早いかもしれない。

 私は背中の加藤君が、「何だよ……」と呟いた声を聞いた。

「良枝、放して!」

 私は加藤君の姿が見えなくなるまで雅巳の手を離さなかった。雅巳は私より背が高いが、体つきはずっと華奢で細い。

だから私もここまで雅巳を引っ張ってくる事ができた。

「何で!加藤に対してそんなにムキになるの?」

 悲しそうな顔の雅巳。こんな顔をさせたいわけじゃない。

「加藤君ってなんだか下心が見えて嫌なの!」

「下心って?」

「あの人、雅巳の事好きなの!分かっているでしょ?」

 ずっと雅巳目当てに近付く男の子達を私が蹴散らしてきた。そういう男の子達は雅巳の良さを分かって、近付いて来ているんじゃないように私の目には映っていた。

 雅巳の綺麗な表面だけ見て近付いてくるような男の子達に、私の親友は絶対に渡さない!

「加藤が私を?いやだ!そんな訳ないよ」

 雅巳がお腹を抱えて笑い出した。笑いすぎて目じりに涙が溜まっている。

「どうして笑うの?」

「イヤ~、おかしい!そんな事で今まで加藤に嫌な態度とっていたの?ホントに良枝は子供だね」

「だってぇ」
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