君の声が聞こえる
　雅巳の笑顔を見ていると、ついさっきまで確信めいていた勘のようなものがガラガラと音を立てて崩れていく。

　私の間違いだった？またやってしまったんだろうか？

「大体、好きな女の子に『須藤』だなんて呼び捨てにする？私の事を言うんだったら、むしろ良枝狙いだったんじゃないの？」

「私狙い？」

「だって女の子らしいって言われてたでしょ？」

「え？そうなのかな？」

「さあ？でも私のことを好きっていうのはないと思うな」

　呑気な表情でそんな事を簡単に口にする。

「でも、雅巳は加藤君が気になっているんでしょ？だって、さっきマネージャーって言った時……」

　あの時の雅巳は平静ではなかった。ほんのちょっとだけど、「やってみたい」という感情が覗いていた。それは加藤君が誘ったからではないのか？

「ああ、あれね。運動をするのは無理でも、マネージャーという形で参加するのもアリかなって思っただけ。別に加藤がどうとかって事はないよ」

「マネージャーなんて駄目駄目！絶対に反対！」

　子供のように大きな声を張り上げた私に、雅巳は驚いたように何度も瞬きを繰り返した。

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