君の声が聞こえる
 瞬きをするたびに長い睫が大きな瞳に影を作って、怪しい色気を演出する。

勿論、それは雅巳が意識している事ではないだろうが。

「本当に良枝は子供だね!」

 呆れたような、諦めたような声音。一つ息をついて「しょうがないな」、と雅巳が呟いた事で、ようやく私は自分が勝ったことを確信するのだ。

「やらない。マネージャーなんて。それでいいんでしょ」

「うん」

 今まで私達はいつだってこうだった。私の我が侭で雅巳を引っ張りまわし、雅巳はそれを溜息一つで許してくれる。

もしこれが雅巳でなかったらこうはいかないだろう。

それ以前に、雅巳でなかったら私もこんな我が侭を口にはしないかもしれない。

 そして、私達の友情は持続せず、すぐに壊れてしまったに違いない。

 しかし、この頃の私は本当に子供だったのだ。

雅巳に寄りかかって、彼女の気持ちを考えない、わがままな子供。

それが雅巳を苦しめているなんて考えもしなかった。

< 24 / 225 >

この作品をシェア

pagetop