君の声が聞こえる

僕の好きな人

(by・睦月)

僕は溜息一つをこぼして彼女の背中を見つめる。

彼女の背中は華奢で女の子らしい。

女の子にしては短い彼女の茶色い髪の毛は、本当に柔らかそうだ。

それだけじゃない。隣に並んだ時、彼女は本当にいい香りがするんだ。そんな事を考えただけでドキドキしてしまう僕は本当にどうしようもないと思う。

あの幻のような出会いから二日後、僕は入学式で彼女との再会を果たす事ができた。

彼女も僕と同じ経済学部の学生だと知ったのは、その時だった。

入学式は総体(総合体育館)と呼ばれる大きな体育館内で一年全体で行われることになっていた。総体はS大球場の西脇にある。

僕は誘導されるまま、その会場に向かった。会場付近ではサークルの勧誘をやっていて、かなりの量のビラをもらう事となった。

会場の入り口付近で、彼女を見つけ、声をかけたのは僕からだった。そうしないと、彼女から声をかけてくる事は絶対にないと思ったのだ。声をかけた時、彼女は首を巡らせて誰かを捜している様子だった。

仲のいい子でも一緒の学部にいるのだろうか?

もしかして彼氏?

そう考える事は僕にとって、とてもつらい作業だった。
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